独ソ戦 絶滅戦争の惨禍(大木毅著)

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ロシアがウクライナに侵攻した。
もうニュースを観るのもつらいので、こういう時に、両国の歴史について理解を深めようと考え、「独ソ戦 絶滅戦争の惨禍(大木毅著)」を読みました。

感想としては、圧巻の一言。
ヒトラーとスターリンが両者ともにおかしくなっていくにつれて、指数関数的に積み上がっていく戦死者数。最終的に両国合わせて3,000万人以上。ヒトラー、スターリンの判断ミスによって死ぬ人数が桁違いで….2人がちょっと意固地になるだけですぐに100万人くらい死んでしまう、という事象の記録の連続です。震えます。

文中に多くの数字が出てきます。各国戦力や移動距離の記述も多いのですが、死者数と捕虜数のデータが圧巻なので、とりあえずそれだけ抽出して記録しておこうかと。

ソ連側犠牲者数

項目 犠牲者数(人) 詳細
総死者数 27,000,000 最大の推定で、戦闘員11,400,000、軍事行動・ジェノサイドによる民間人犠牲者10,000,000、その他疫病及び飢餓等により9,000,000
スターリンによる粛清 22,705 クーデターを恐れたスターリンが銃殺した将校の数
バルバロッサ作戦 504,937 ドイツ軍との初戦による戦死、負傷、捕虜数
キエフ戦 452,720 ウクライナ戦線の戦死者(ヒトラー・スターリンが当地域に拘泥)
レニングラード包囲戦 1,000,000 ヒトラーが包囲戦を選択、スターリンは断固として聖都を放棄せず
死者の97%が餓死(人口319万人)
ユダヤ人虐殺 900,000 ドイツ軍出動部隊によるソ連領内のユダヤ人の虐殺
ソ連軍捕虜死者数 3,000,000 全捕虜数5,700,000人中の死亡者。強制労働、飢餓、伝染病等。
ソ連軍捕虜強制労働者 8,400,000 民間人も含む

独ソ戦開戦初期はドイツ軍の攻勢が凄まじく、またスターリンが主要な将校を大量に銃殺していたためソ連軍の統率が取れておらず、大量の犠牲者が積み上がっていきます(独ソ不可侵条約をドイツが破って侵攻してきた、という点も重要)。特にレニングラードはスターリンが死守を厳命し、ドイツ軍が900日間の完全包囲を行ったため、食料が届けられず、民間人も含め、100万人の餓死者が出ます。おそろしすぎる….

独側被害者数

項目 犠牲者数(人) 詳細
総死者数 3,000,000
~5,000,000
戦闘員5,318,000、民間人3,000,000(独ソ戦以外も含む数字)
スターリングラード包囲戦 195,000
~380,000
包囲を解いたソ連軍の反攻
ドイツ人捕虜数 2,600,000
~3,500,000
およそ30%が死亡と推定
ソ連国内のドイツ系民族 1,400,000 強制移住させられ、20~25%が死亡と推定
ドイツ占領地域の難民 12,000,000
~16,000,000
ソ連の反攻に伴い、ドイツ占領地域にいたドイツ系民族は徒歩でドイツに向かうことになる
1945年8月の犠牲者 450,000 ソ連軍のドイツ領内への侵攻によりこの月だけでこの人数が犠牲になっている

1943年頃から、ソ連軍の態勢が整い、反攻が開始されます。
この時点で既にソ連側で数百万から数千万人の犠牲者が出ていますから、「報復は正義」とされ、ソ連軍のドイツへの報復も凄惨なものになっていきます。戦闘員ではない子供や女性も大量に虐殺されます。
ところで、なぜドイツは最終段階の絶望的な情勢でも抗戦を続けたのかという問いには、ドイツ人の生活水準は周辺諸国を占領することによって支えられており、よって、ドイツ国民はナチスに間接的に加担していたのだ、との見解が記述されています。

第二次大戦のヨーロッパ戦線はドイツvsイギリスやフランスが注目されがちですが(映画が多いからでしょうか)、独ソ戦の方が圧倒的に犠牲者が多く、この本を読むとこちらが主要戦線なのだと気付かされます。
本書では独ソ戦は途中より絶滅戦争(世界観戦争)に突入してしまったのだ、と指摘しています。

これだけの強烈な犠牲をもって絶滅戦争を戦ったのだから、ナチスを殲滅したのは俺たちだ!という自負はでるわなあ。ちなみにイギリスの犠牲者は450,000人(Wikipedia)。死者を数で比べるな!というのもわかるけど。けどねえ。
当然、戦争を仕掛けるのは最悪だと思います。ただ、なぜイギリスフランスはEUとかNATOとか言ってドイツと連帯して、東側に拡大してきやがる?という気持ちにはなるわなあ、と自分としては多少腑に落ちてしまうものがありました。

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