金融所得課税強化(配当二重課税)について

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岸田さんが、やっぱり金融所得課税を強化したいとおっしゃっています。
いわゆる「1億円の壁」という、所得が1億円を超えると実質税率が下がっていくという現象への批判への対応です。所得が大きい人の年収の多くは配当や利子等の金融所得によって構成されているのですが、金融所得への税率が大体20%のため、実質税率が下がってしまう、という現象です。税率20%というのは大体年収1,200万円くらいの人の税率ですね(所得税・住民税含む実質の累進課税額から逆算)。

いや、そりゃおかしいやろ、大層金持ちのくせに….不公平やないか。という気持ちはよくわかります。
ただまあ、この問題は非常に複雑で、パッと考えただけで、株式市場への影響、海外税制との整合性、他の所得への課税との整合性、配当の二重課税問題等、大量の論点が思い浮かびます。

そういうわけで私は金融所得税の強化には反対したいと思っているのですが、とりあえず配当の二重課税問題について書いてみようかと。
この「二重課税」の仕組み、意外と頭がいい人もなかなか適切に理解するのは難しいようで。いや、私だって実際に自分自身が二重課税されそうな現実に直面するまであまり真面目に考えなかったですから。

とりあえず、売上=利益=1億円の会社があったときに配当課税を50%(通常の累進課税と同じ)にまで強化した場合を表にしてみました。

利益1億円会社の課税

科目   現状(配当課税20%) 配当課税50% コメント
売上   100,000,000 100,000,000 売上=利益=1億
税引前利益(課税所得) 100,000,000 100,000,000 費用なし
法人税   35,000,000 35,000,000 法人税35%
税引後利益 65,000,000 65,000,000 全額配当します
         
税金 法人税 35,000,000 35,000,000  
  配当への課税 13,000,000 32,500,000 上記配当額に課税 
  税金合計 48,000,000 67,500,000 上記の合計
税率   48.0% 67.5% 税金/利益

※累進課税の最高税率は50%を超えますが、単純化して50%としています。同様に法人税も単純に35%とします。

げえええ!配当に普通に50%課税すると税率67.5%になってしまう!
法人で課税された後に更に個人所得税で配当額に課税されるからです。
配当ってのは、すでに法人で課税されているものなんです。
現状の制度はこれをなるべく避けるようにして、配当課税を20%にしているので、結果は累進課税の最高税率50%とほぼ同じで48%です。
いや1億円も儲かってるんだからこんくらい課税してもええのや、という意見もあろうかと思います。しかし、全額役員報酬で払った場合や、法人にせず個人事業の場合は50%しか課税されないので、整合していません。そしてやはり67.5%は高すぎるのでは?

つまり、株式配当に関しては、シンプルに累進課税にするわけにいかないと思うわけです。
では、株式は累進課税から除きましょう、という意見もあろうかと思いますが、では、投資信託は?REITはどう考える?デリバティブだって株式オプションもあるぞ。そして、貸付利子と株式配当の本質的な違いとは?
といった複雑な話に入っていってしまいます。

更にいうと、事業を行って配当をもらうことと、単純に金融資産から利得をもらうことを分けることができるのか?という話に行き着いていきます。

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