15. 中学受験に効く漫画(歴史 古代~奈良時代)

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歴史漫画は大量にありますが、古代から奈良時代までは里中満智子先生一択ですね。
小学館や集英社等から発売されている、「漫画で学ぶ日本史」的なものもいいですが、やはり、商業作家として長年キャリアを積まれている先生の漫画はエンターテイメント性が段違いです。
特に里中満智子先生の作品は、登場人物の心理描写がやり過ぎなくらいに丁寧。
「漫画で学ぶ日本史」的な作品ですと、どうしても歴史上の出来事の羅列になりがちで、登場人物がなぜそのような行動を取ったのかについて、深堀りされていないと感じてしまいます。
「おおっ、大軍が攻めてきたぞ!しかし怯むな!我が騎馬隊は日本一ぞ!」「父が死んだ。悔しい。泣くな父の意思を継ぐぞ」みたいなね。表現がのっぺりなのよ。
一方、里中作品は、おそらく多分に先生の想像が入っているにせよ、主人公の恋心や嫉妬、そねみなどが実は重要な歴史的出来事に影響している、というスタンスで描かれます。「女帝」では、孝謙天皇が藤原不比等を愛していた、という設定で描かれますが、先生、ホンマですか、なんで知ってはるんですが、と言いたくはなります。でも、それがいいじゃないですか。

小学生男子が登場人物の心理描写(特に比喩表現)が理解できない、という問題(よく「赤い実はじけた問題」とか言われますね)は、女性作家の漫画を幼少の頃に読み込んでいないからでは、と私は昔より勝手に主張しております。
少女漫画の背景で、花やガラスが壊れる絵が描かれたりするじゃないですか。あれはまさに心理描写ですよね。ああいった表現に慣れていると、中学受験国語の比喩表現もすっと頭に入るんじゃないかと、斯様に思っております。

ギリシア神話(里中満智子先生)

すみません、世界史、しかも神話の世界ですので、のっけから中学受験の科目には関係ありません。
でも、これは傑作でした。
ギリシア神話の神々は、欲や嫉妬にまみれた人間くさい存在で、自分本意で勝手な行動ばかりしています。ゼウスなんてヘラという妻がいながらずっと浮気し放題です。しかしゼウスが浮気することにより、たくさんの神の子が産まれ、その神の子たちがまた勝手な行動をすることにより、世界が広がっていきます。妻のヘラはヘラで嫉妬しまくりで、ゼウスの浮気相手に対してひどい仕打ちをしまくります。ヘラも神様なんですが(結婚の神)、やることがエグくて、浮気相手に同情を禁じえません。ゼウスが悪いのに。
他の神様もサイコパス的なやつらばかりで、ちょっと下位の神や人間が気に入らないことをすると、簡単に大量虐殺をするし、エグい拷問も平気で実行します。
え、なんでそんなの小学生に読ませるの、という話ですが、里中先生が描くと綺麗に読めるんです。
また、私はギリシャ神話の神様というのは、人間のプロトタイプのショーケースのようなものと考えていまして、小学生にはそのショーケースを見て人間の本性を学んで欲しいと期待しているところです。

そして、これが古事記につながります。

古事記(里中満智子先生)

ギリシャ神話よりは若干マシですが、やはりわがままで傲慢な神々が好き勝手に行動した結果、なぜか日本国が出来上がっていく様を描いています。
見るなと言われた死者の形相となったイザナミを見てあっさり逃げ出すイザナギとか、楽しそうな音楽につられてついつい扉を開けてチラ見してしまうアマテラスとか、人間臭い見どころはいくつもありますが、個人的にはオオクニヌシのエピソードが良かったですね。なんつっても島に紐くくりつけて引っ張って集めてきて日本国を作っちゃってますから。まあ、国造りってそういうものですよね。

日本史を学ぶならまずはここからでは、と思うのですが、どうでしょうか。
うちはこの漫画を読んだ直後に出雲旅行に行き、オオクニヌシに詣ってきました。

 

天上の虹(里中満智子大先生)
先生、すみません!最後まで読めていません。23巻もあるので….
女帝である持統天皇の物語。でも読めたら素晴らしいと思う。中大兄皇子イケメン。

女帝の手記(里中満智子大先生)
藤原家の権謀術数に巻き込まれてしまった女帝・孝謙天皇の物語。少女の頃からの孝謙天皇の精神の成長を描く。
藤原不比等のサイコっぷりが気持ちいい。藤原家の繁栄のためならば女性天皇の恋心すら利用する。
そして孝謙天皇に募る不比等への不信感。この辺の表現が里中先生ならではですね。

長屋王残照記(里中満智子大先生)
藤原不比等の息子たち、藤原四兄弟の陰謀により暗殺される長屋王の物語。
人格も能力も秀でている長屋王。お父さんの不比等と比べると何もかもいまいちの四兄弟。
まあ、藤原家の繁栄のためには殺すしかないよね。

孝謙天皇や長屋王を悲劇の主人公にすることにより、藤原家の傍若ぶり、姑息ぶりが際立っています。
くそー藤原家め….と臍を噛む気持ちになり、小学生の頭にもきっちりと刻み込まれるかと。
「藤原家ってまじやばいよねー」という会話が子供とできれば目的達成ですね。

 

旧約聖書、新約聖書(これも里中満智子大先生)
ついでに、里中先生は新旧聖書も漫画化していて、とてもわかり易かったです。
5年、6年と学年が上がっていくと、特に社会の問題などで広めの教養を求められるフェーズが来ますが、その際に最低限、ユダヤ教とキリスト教の基本知識くらは入れておいた方が望ましいとは思います。
いや受験関係なく、必要な教養ですね。こういった漫画で基礎教養を仕入れておくと、本を読む段階になったときもすんなりと入れると思うんですよね。

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